平成27年1月からの相続税の基礎控除引下げを受け、節税対策や事業承継対策などという言葉が皆様の耳にも多く届いているかと思います。
そんな中、生命保険契約を利用した「生命保険料の贈与プラン」も相続対策として注目されています。祖父母から孫、両親から子へと保険料相当額を贈与、保険料負担者を孫や子として、保険事故発生時(死亡時)には、一時所得課税になるという事により、課税を安くするという方法です。相続税の課税税率より一時所得((受取保険金-既払保険料)*1/2-50万円の課税税率が低いという前提で加入されていると考えます。
さて、この「生命保険料の贈与プラン」には、注意点がありまして、“保険料相当額を贈与する”という所に論点があります。
贈与という行為は、「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意志を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」とされています。ようするに“やった側は、やりました”“もらった側はもらいました”としなければならないという訳です。
この贈与について問題になった裁決が過去にありました。
原処分庁は、「本件保険契約の実質の契約者、保険料の実質の負担者は亡○○であると認められ、保険料に見合う金員の贈与があったと認めるに足る証拠は存在しない事から、本件保険金及び保険の権利は、相続税法第3条の規定に該当し相続税の課税対象となる。」と更生処分をしました。
認定事実ですが、
- 本件保険契約に係る保険料は、亡○○の普通口座から引き出されていた。
- 本件相続の開始約10年前に、本件保険契約は、亡○○が死亡したときの相続税を支払うために契約した旨を亡○○から聞いていたが、請求人らは、本件相続の開始までは本件保険契約の証券を受領しておらず、本件保険契約の内容を知らなかった。
- 請求人らは、平成15年8月7日に亡○○から株式2,700株及び現金1,500万円の贈与を各々受け、平成15年分の贈与税の申告を行っているが、本件保険契約に係る保険料相当額の金員については贈与財産の対象としていなかった。 とある。
国税不服審判所の判断は、
- 亡○○から請求人らに本件保険契約に係る保険料相当額の金員の贈与があったとは認められない。とした。
理由として、
- 相続が発生するまで、保険契約の内容も知らなかった。
贈与は契約である事から、受取った方の受贈の意志が認められない。
- 保険料支払いの手続きを請求人がする事が一切なかった。
- 平成15年分の贈与税の申告において、保険料相当額の贈与の申告をする意志が一切見受けられなかった。
- 平成15年分の贈与税の申告を含め、贈与税の申告が一度も行われなかった。とあります。
このように保険料相当額の贈与が成立するかは“贈与があった事実”がポイントです。
①毎年の贈与契約書
②過去の贈与税の申告書
③所得税の生命保険料控除 の状況なども重要となります。
株式会社大成経営開発 岡村泰