40年ぶりの改正

民法に含まれる相続に関する規定の改正案が2018年の通常国会で成立し、2019年より順次施行されます。
民法は、税法のように毎年改正されるものではありません。今回の相続法改正も約40年ぶりの改正となります。
生活環境の変化が進む中、残された妻や介護をした遺族等の権利の保護など、実情を考慮し
トラブルを防ぐ内容の改正となっておりますので、ご紹介したいと思います。

■「配偶者居住権」の創設


夫が死亡した際の妻の取り分は、子がいる場合は遺産全体の2分の1と、民法で決められています。
配偶者が残した相続財産が自宅家屋とその敷地が中心だと、自宅も含め遺産分割する為、妻の取り分は
自宅がほとんどで、現預金が少額になる事や、自宅の売却金額を分割する等、妻の住む場所や
十分な生活費を相続できないとの不条理がありました。

今回の「配偶者居住権」では、住宅の所有権と居住権を分離し、妻が所有権を持たなくても自宅に住み続けること
を保障する仕組みです。

居住できる期間は、遺言や遺産分割協議をもとに決められます。この居住権の評価額は、配偶者の平均余命などを
もとに決められます。 ただし、所有権に比べると居住権のほうが弱いため、居住権登記の手続きをすることで、
権利を確保する必要があります。この登記により、子などが所有権を一部は持っているため、所有権を他人に売却されることで、
実際に住んでいる家からの退去という事態を防ぐことができます。


また、妻の権利が認められるもう1つの改正は、婚姻期間が20年以上あれば、夫婦間で贈与された自宅は、
遺産分割の対象から除外する仕組みです。自宅は残された妻のものとなり、遺産分割の対象から外され、
それ以外の遺産を相続人同士が法律に沿って分割します。
高齢の妻の安定した生活を支援することが目的です。

■「特別寄与料」の創設


親と同居していた長男の妻が介護で苦労したとしても、夫の取り分としては評価されても、相続人ではないため
彼女自身の貢献度は評価されませんでした。今回の改正により、相続権はありませんが
「特別寄与料」という制度が創設され保護されます。

相続が発生した時点で、介護の貢献度に応じて相続人に対し請求できます。法律上の相続権がない人でも、
特別寄与料の請求が法的に認められます。

ただし親族以外の第三者が介護に協力したとしても、この特別寄与料は認められません。ますます深刻化する介護問題へ、
1つの指針が示されたことになります。

特別寄与料の請求先は義理の兄弟姉妹になるため、現実的にはかなり大変です。合意できないときには、
家庭裁判所が提示している算式が参考になります。家庭裁判所での寄与分の算定は、1日当たり8000円程度を
目安に介護した期間を掛けて算定しています。

ただし相続財産の多寡により、特別寄与料も変わることが予想されます。

その他、遺留分や自筆証書遺言書の作成や管理についての改正もございます。
遺産分割による争族対策に法が創設されたと思います。しかし、争族は根深く、使う方に悪意があれば諸刃となるのも事実、
争族にならないカギは、生前の根回しと準備です。我が家は揉めないの概念はまず、なくした方が良さそうです。



岡村泰

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